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「どうしたい、君はその恰好をまだ見せたい気かい」
「今日はえらい早いお帰りだね」
「さうですか、さうですか。それは、いや、ごていねいなことで」
が、一隊がふたゝび町中にさしかゝつて来ると、汗と埃でよごれ、ゆるんだ表情の彼等に見られるありありとした疲労は、待ちうけていた見物人達にたちまち同情と心配をひき起した。今や、この一隊は紙衣の神官でもなければ行列でもなく、見物人達の良人をつとであり、父親であり、主人であつた。草履の代りに下駄が、下駄の代りに草履がはき代へさせられ、手拭を出し、熱い番茶を持つて来、中には自宅の縁側に悠々と一休みして行く者さへあつた。
と、父親の顎のあたりに又目をつけた。
川では鮎漁がはじまつていた。
半シャツの男は房一の前に来て、はじめてお辞儀らしい格好をした。
そこには一人の男が顔を手拭で蔽はれたまゝ、一種普通でない様子で寝かされていた。手拭の下からは赤黒く汚れた額の一部と、土埃にまみれた頭髪とがはみ出していた。その傍には、やはり印袢纏着の真黒い顔の男がついて、ぽかんとして戸外を眺めていた。
その時、練吉はぐつと盃をつきつけた。
傍にいた赭あから顔の老人が低い声で云つた。
で、この二人の間に交されたとんちんかんな立話は終りを告げた。
「もう着てみましたか」
その当時は差したることでもないように思っていたが、翌年の春になっても痛みが本当に去らない。それが打身のようになって、暑さ寒さに崇たたられては困るというので、支配頭の許可を得て、箱根の温泉で一ヵ月ばかり療養することになったのである。旗本といっても小身しょうしんであるから、伊助という仲間ちゅうげんひとりを連れて出た。